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- 2020年度修論要旨
修士課程2年 周 晨萱
修論題目:「博物館におけるSNS運用に関する研究―7つの館における対比と円山動物園の時系列変化から考察して―」
【キーワード : SNS、ソーシャルメディア、情報発信 】
近代社会の変化に対応するため、博物館の情報発信活動はさらに重要視されている。SNSは情報発信の手段として、インタネットやスマートフォンの普及によって、市民の生活に浸透し、日常的に使われるメディアになった。SNSを運用して情報発信活動を行う博物館も大幅に増加している。以上のことを背景に、本論文は博物館がSNSを運用する情報発信活動の実態に着目し、複数の博物館のSNS運用の比較と単一博物館のSNS運用の時系列の変化をあきらかにする。
第1章では、SNSを運用する情報発信は博物館にとって重要になりつつあることを研究背景として整理した。近年においてSNSを運用する情報発信が行なわれている博物館は増加し、その増長率も高い。SNSにおける情報発信活動が博物館活動の一環になりつつある。したがって、今日の情報化社会の中で、全領域の博物館活動を理解するために、博物館におけるSNSの運用実態を把握する必要がある。
第2章では、これまで博物館のSNSに関する先行研究を3つに分類した。その上に、先行研究は多数の博物館におけるSNS運用状況を比較されていないことを確認した。また個別館のSNS運用について、今のSNSの運用手法や運用体制に辿りつく過程、時間がたつにつれての変化、こうした時系列の研究がなされていないことを確認した。
第3章では、先行研究に出てきた7つの博物館を対象に、1)運営、2)運用するSNSと運用開始年、3)SNS導入目的・きっかけ、4)位置づけ、5)SNSの運用体制、6)SNSの運用に心がけていること、7)発信内容、8)更新頻度、9)発信の決裁、10)運用効果、11)課題の11項目を分け、SNS運用実態を分類整理した。SNSの位置づけを見ると、全ての事例館がSNSを広報ツールとして位置づけているほか、各事例館は自館の理念や使命・ミッションに基づいて、自ら多様なSNSの位置づけを探るようになっている。運用体制を大別すると、(1)山種美術館のような館長を中心とする体制、(2)森美術館、鳥羽水族館、三重県総合博物館、仙台天文台のような専門的な広報チームが担当する体制、(3)海遊館や大阪市立自然史博物館のような、事務職と専門職の混成チームが担当する3つの体制に分けられることを確認した。SNSへの情報発信は記名するかどうかについて、①記名発信と無記名の発信を混ぜて使う館と②無記名で情報を発信する館の2つのタイプがあることを確認した。
第4章では、主に円山動物園が運用する2つのSNS、ブログとTwitterを対象に時系列に沿う運用変化を整理した。ブログ時期からTwitter時期にかけて、円山動物園が運用しているSNSに対する位置付けの変化をみると、単純の来館者とリピーターの増加に運用されたブログから、「ファンづくり」に意識しじ始めて、さらに今の「教育」と「リ・クリエーション」の側面を持たれるようになってきたことを確認した。
第5章では、第4章に記述した円山動物におけるTwitterの運用実態と第3章の7つの博物館のSNS運用実態を対比し、3つの市立館を選出し、さらにその3つの市立館におけるSNSの運用形態を比較整理した。一方、博物館の情報発信の理想像に対して、SNSだけを運用するではなく、複数の情報発信メディアを用いて情報発信を行うという意見を挙げた。
第6章では、各章のまとめを行うとともに調査対象館の増加や対象館に対する実際の聞き取り調査が必要することを課題として挙げた。