- HOME
- 2020年度修論要旨
修士課程2年 伊藤 優衣
修論題目:「宗教組織アーカイブズにおけるシリーズ・システムを適用した編成記述の実践」
【キーワード : アーカイブズ、宗教組織、教会、シリーズ・システム、編成記述】
本論文は、日本聖公会北海道教区アーカイブを事例に、宗教組織アーカイブズにシリーズ・システムを適用した編成記述の実践をおこない、有効点と課題点を見出すことを目的とする。
アーカイブズ分野に遅れを取る日本では、民間アーカイブズでは資料が常に散逸の危機にさらされている状況である。さらに民間組織では組織内の無理解から資料の安易な廃棄や保存部署の廃止がおこなわれたり、専門性を欠くといった課題がある。また宗教組織ではアーカイブズの未整理と公開性の欠如、活動の内部化傾向といった宗教組織ならではの課題も指摘されている。これらの課題を解決するべく、資料整理活動で最も重要かつ手間のかかる編成記述を手早く進め、資料コンテクスト再構成に着手する手立てとしてシリーズ・システムを試験的に導入実践した。
その結果、資料来歴が不明でも大かた機械的に編成記述を進められ、資料コンテクスト再構成に着手できる柔軟性や早期公開を実現し得る有効性を見出した。一方、編成の軸が多少ぶれやすいことや、資料の利活用時にシリーズ・システムの柔軟さが資料コンテクスト情報の齟齬を生む可能性があるという課題点も確認した。
最後に、宗教組織アーカイブズが組織内部の記憶から社会の共有記憶へと展開していく可能性について、宗教組織アーカイブズの各事例や今回の実践から、社会に対し歴史や文化を中心に宗教組織からみた社会への視点を提供する役割をもつと考察した。