- HOME
- 2019年度修士論文要旨
修士課程2年 楊 朝暉
修論題目:「北海道の博物館におけるインターネット情報発信に関する研究」
【キーワード : 博物館ウェブサイト、インターネット情報発信、情報発信格差、博物館ウェブサイト利用者、SEO(検索エンジン最適化)
】
本研究では、インターネットと博物館および博物館のインターネット利用者について整理し、北海道の博物館のインターネット情報発信実態を明らかにする目的のもと、道内の博物館のリストアップを行い、方向性を示す調査項目を作成し、博物館ウェブサイトの利用者とし、項目の掲載の有無を調査した。それによって、調査の結果の分析・検討を行った。次に、第三者の立場から博物館ウェブサイトの利用者活動をモニタリング調査した。結果から調査項目の掲載率とウェブサイトのアクセス数について論じたものである。なお、本研究は個別の館およびそのウェブサイトの評価を意図するものではない。
先学による博物館のウェブサイトの現状に関する研究には多くの蓄積ある。その中で多くの先学では、博物館ウェブサイトを広報の手段と捉えている。しかし、博物館は公共性を持つ存在であるため、博物館ウェブサイトの本質は公共サービスである。筆者がここで注目したいことは二点ある。第一に、博物館の資料は公共財として、アクセスを確保するべきだとされ、ICOM職業倫理規定(2004)にも「博物館とその収蔵品が適切な時間帯に一定の期間全ての人に公開されることを保証すべきである」と述べている。また、資料のウェブ公開はこれ以上の意義を持っている。それは遠隔地で入館できない人や障害がある社会的弱者など、入館したくても入館できない人も博物館サービスを享受できる。第二に、筆者は博物館実習の授業を履修し、指導教員と一緒に札幌市内にある複数の館を訪問した。その際、博物館には多くのコンテンツ資源が眠っていることを気付いた。しかしながら、地域性がある民具や過去の図録、研究紀要、館の広報誌は容易には利用できない。このように、本来活動を実施しているにもかかわらずインターネット上に公開していない館は、より責任を意識し、積極的にサービスを提供すべきであろう。
以上の背景から、本研究では、北海道内の博物館のリストアップを行なった上で、26個の調査項目を作成した。利用者の目線に立ち、各館のウェブサイトにアクセスし、北海道の博物館の、インターネットによる情報発信の実態を明らかにする。また、博物館の経営形態・館種・地域と博物館の間の情報発信格差の関連性を検討した。次に、第三者の目に移って、博物館ウェブサイトの利用者活動をモニタリングする。外部からウェブサイトの利用状況を明らかにし、博物館ウェブサイトの調査項目の掲載率と実際アクセス数の間の関連性を考察した。
これまでの博物館ウェブサイトに関する調査項目では、サイトの構築方法については注目されていなかった。また、博物館ウェブサイトは広報の手段であるという捉え方を転換し、公共サービスと捉えなおすことが必要と考える。これらを踏まえて、今後、博物館ウェブサイトを構築するためのガイドラインを策定することや現状を再認識するための一助となれば幸いである。