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- 2019年度研究論文1の構想
博士課程1年 魏 雯君
研究論文1の構想
「歴史系博物館における歴史展示および来館者に対する認識変化についてー都道府県立歴史系博物館を対象にー」
【キーワード : 歴史展示、展示リニューアル、インタラクティブ展示 】
地方自治体の記念事業を機に日本各地に公立の歴史系博物館が建設された。すでに数十年にわたる歴史を持つこれらの博物館は、現在では一方的に「歴史」を創る場となりつつある。とくに常設展示では、体系的な展示シナリオに基づく通史展示が主流となっていた。地域の「歴史」がいくつかの時代に区分され、時代ごとにテーマが設定され、図表が描かれたパネル、模型、映像などの展示手法で表現されるような、来館者に固定的な歴史像を押しつける展示である。
こうした状況に対し、近年では来館者の主体的な参加や個人的な理解を促進することを目的とした展示も考案されている。例えば、来館者自身が学びたいテーマや利用する資料を自由に選択できるように工夫された学習空間がある。また、結論だけを提示するのではなく、来館者に対して質問を投げかけ、議論と検討を促すような展示が見られる。私の研究は、そうした展示を作る側と見る側の双方の関係性変化について考察することを目的とする。
とくに研究論文Ⅰでは、都道府県立歴史系博物館のリニューアル状況を切り口とした分析を目指している。博物館側の歴史展示の内容および来館者に対する考え方の変化を明確化し、それぞれどのような要因が影響しているのかを検討したい。具体的には、以下の3段階の分析と検討に取り組んでいる。
1. 日本博物館協会が刊行する『全国博物館総覧』に登録されている都道府県立の博物館園のうち、「総合」「歴史」「郷土」に区分される博物館を抽出し、そのなかで常設展示のリニューアルを行った館を調査対象として位置づける。
2. 調査対象館の定期刊行物や発表論文などの内容確認。①展示目的、②展示空間の配置(常設展示と企画展示面積の増減、新設展示室の有無など)、③展示シナリオの類型(通史型、テーマ型、複合型など)、④来館者に言及する内容をデータとしてまとめる。
3. 2の結果に基づき、博物館側の歴史展示および来館者に対する認識変化について考察を行う。