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- 研究論文要旨
博士課程3年 古田 ゆかり
研究論文1(2017年度提出)
「企業が企業博物館に期待する要素と企業博物館の機能に関する考察」
【キーワード: 業博物館、企業ミュージアム、コーポレート、コミュニケーション、ミュージアムマネジメント】
企業博物館等施設には、資料の収集・保存、調査・研究、教育・普及をその役割とする一般の公立博物館とは異なり、企業が期待する機能が存在する。したがって、社会のために技術資料等を収集、保存、展示、公開を行うことは、企業にとって企業博物館施設を設置、運営することの動機とはなりにくい。そこで、本稿では企業が企業博物館等施設にどのような機能を期待しているのかを明らかにすることを試みた。企業博物館等施設を設置、運営する企業へのヒアリングを行い、経営の視点から企業博物館等施設のとらえ方を調査することにより、企業ブランディングやPR、社員教育や社員アイデンティティ向上、CSR活動など9つの機能に分類でき、各企業はこれらの機能について選択的、複合的に企業博物館施設を活用していることを明らかにした。
研究論文2(2018年度提出)
「経営の視点から見た企業博物館等施設の機能と企業博物館等施設の位置づけに関する研究」
【キーワード: 企業博物館、企業ミュージアム、コーポレート・コミュニケーション、ミュージアムマネジメント】
企業博物館等施設は一般の公立博物館のように公共的な役割、社会的、文化的な価値のみならず、企業の経営の文脈で機能しうることから、企業博物館等施設についての論考は博物館学のアプローチだけではなく、「CSR」や「マーケティング」「ブランディング」といった経営の視点をもって調査、アプローチすることが不可欠である。
本研究では、研究論文1で示した9つの機能が企業経営のどの部分に充当されるのかを検討した。その結果、企業の顧客や購買元のみならず現代社会において企業が意識すべきさまざまなステークホルダーを視野に入れたコーポレート・コミュニケーションの一部としてとらえていることを明らかにした。企業には広告やカタログ、イベントやスポンサードなどさまざまなコミュニケーションの形態があるが、この中の1つに企業博物館等施設があることを示した。さらに企業博物館等施設の機能を9つに整理することによって、博物館的機能はそのうちの一部であることを示した。これらのことから、企業博物館等施設を考察する視線として、「博物館」という呼称の妥当性やアプローチの枠組みに対する再検討の必要性が示唆された。