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准教授
久井 貴世HISAI Atsuyo

研究室
文学部棟602
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a.hisai@let.hokudai.ac.jp
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久井 貴世江戸時代の鷹狩の様子。マナヅルとナベヅルが描かれている(「御鷹野図巻」国立国会図書館デジタルコレクションより)。 歴史時代の野生動物はどこで、どのように生きてきたのでしょうか。動物自身はその記録を残すことはできませんが、人の歴史のなかに埋もれた動物の記録を拾い集めることで、野生動物の過去の生息実態と人との歴史的な関わりを明らかにすることが可能です。

私は、主に江戸時代の歴史資料に残された動物の記録を用いて、野生動物に関する歴史や文化を解明する研究に取り組んでいます。過去の分布や生態、行動など野生動物自身の実態と、狩猟や保護、人との軋轢、食文化、飼育、流通、贈答など動物と人との関わりの二つの側面から、とくにタンチョウやナベヅルなどのツルを専門とした研究を行ってきました。江戸時代の資料からは、当時の日本列島には全国各地にツルが生息していたことや、領主の鷹狩でオオタカを使ったツルの狩猟が行われていたこと、ツルを塩漬けにした「塩鶴」が贈答品として珍重されていたこと、ツル料理は最上級のおもてなしだったことなど、現代では考えられないような興味深い事実が次々と明らかになります。ほかにも近代日本の動物園における動物管理の歴史や、アイヌ民族と動物との関わりなど、動物と人との関係を解明するうえで重要な研究にも取り組んでいます。

野生動物の過去の実態を調べることは、現代社会における野生動物と人との関わりの問題を考えるうえでも無関係ではありません。現代の野生動物と人の関わりの現場と連携する機会も多く、たとえばツルに関する過去の情報は、歴史的な分布の実態や人との関係性を示す根拠として現代の活動の現場でも活用されています。実社会と関わることは研究意欲の向上や達成感につながるだけでなく、自身の世界を広げる絶好のチャンスでもあります。

野生動物の歴史や文化に関する研究分野は多くの可能性を秘めた分野であり、これからの発展が大いに期待できる分野であると考えています。豊かな発想と熱意をもつ皆さんと共に、この分野の発展と将来を担っていけることを期待しています。

学生へのメッセージ

久井 貴世歴史資料に記録された動物を正しく解釈するためには、自分の目で観察する機会が重要。画像は江戸時代に描かれたライチョウ(「梅園禽譜」国立国会図書館デジタルコレクションより)と、自身で撮影した立山のライチョウ。 「文系だけど、動物に関わる研究がしたい!」という皆さんを歓迎します。この研究室では文系と理系の枠を超えて、とくに野生動物に関する歴史や文化についての研究を行うことができます。これまでにエゾオオカミやタンチョウ、シマフクロウ、カラスなどを対象とした研究が行われてきました。

野生動物の生態や管理などを研究できる研究室はたくさんありますが、野生動物の歴史や文化を専門的に研究できる研究室はほとんどありません。この研究を専門とする研究者自体が少ないため、歴史や文化が明らかになっていない動物もまだまだたくさんいます。北海道は野生動物の宝庫ですが、例えばヒグマやエゾシカ、キタキツネ、オジロワシ、オオワシ、サケなど、昔から人と深い関わりがあった動物についても、歴史や文化はほとんど解明されていないのが現状です。もちろん北海道外、さらには日本国外の野生動物でもかまいませんし、哺乳類や鳥類に限らずあらゆる野生動物が、歴史や文化についての研究対象になり得る可能性を秘めているのです。

この研究では、“歴史的な資料(古文書など)に記録された動物”が主な調査対象となりますが、実際の生きた野生動物を知らずに資料を正しく解釈することはできないという考えから、自分の目で野生動物を観察する機会をつくることも大切にしています。また、野生動物の歴史や文化を解明するために必要であれば、古文書の調査から動物の解剖や標本づくりまで、様々な手法に挑戦することができます。どんな研究をするかは皆さんのアイデア次第です。皆さんと一緒に野生動物に関する歴史や文化を研究できることを楽しみにしています。

主な業績

  • 古文書の「丹頂」からタンチョウを探る:「歴史鳥類学」から解明する江戸時代のツルの歴史(上田恵介編『遺伝子から解き明かす「鳥」の不思議な世界』,一色出版,2019年)
  • 論文:江戸時代におけるツルとコウノトリの識別の実態:博物誌史料による検証(山階鳥類学雑誌50(2):89-123,2019年)ほか

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